今までにないまろやかな味わいに衝撃を受けた
酒碗との出会いは、約2年前です。酒碗を考案した庄島さんから「良かったら使ってみてください」といただきました。初めて酒碗で日本酒を飲んだ時、「お酒って器でこんなに味が変わるんだ」と驚きました。それまで日本酒はおちょこやワイングラスで提供するのが当たり前で、酒碗のようなサイズの陶磁器で飲むという発想はなかったんです。
日本酒の味わいがこれほどまろやかになるとは思わず、非常に衝撃を受けました。日本酒の味を一番わかりやすく感じられる器はワイングラスだと思っていましたが、酒碗と出会い、考えをあらためました。
その後、一点ものの天酒碗を毎月2つずつ導入していき、今ではさまざまな作家の天酒碗を揃えています。
酒碗を使うとどの日本酒も新しい表情を見せてくれる
お客様には、酒碗とオーソドックスなおちょこの両方を出し、「どちらがいいですか?」とおたずねしています。酒碗の良さをわかってもらいたいと思う一方、お客様への押し付けは避けたいからです。
最初は「私はそんなに強くないから、小さい器にします」とおっしゃるお客様が多いですね。しかし、実際に酒碗で日本酒を飲むと「お酒の味わいが全く違う」と皆さん驚かれます。お客様の反応が、一番の答えです。
お客様から「どの日本酒と酒碗が合いますか?」と聞かれる機会も多いのですが、酒碗で飲むとどのお酒も今までにない表情を見せてくれます。
日本料理は味がパッと立ちすぎず、日本酒も白黒はっきりした味わいではないものが多いです。それこそが、日本の文化です。わざわざワイングラスを使って味をはっきりさせる必要はないと考えています。酒碗が登場したことで、日本料理と日本酒、そして日本の文化が自然につながりました。
日本文化を大切にする人に酒碗を使って欲しい
酒碗をおすすめしたいのは、日本文化をリスペクトして、しっかり伝えたいと思っているお店の方々です。酒碗を使うことで、今まで見えなかった世界が必ず見えてくるはずです。もちろん、お客様のなかには従来通りの酒器で良いという方もいらっしゃいます。それでも折れずに酒碗を使い続け、スタンダードになっていく過程を自分たちでつくっていける方に使ってほしいですね。
当店の天酒碗のなかには欠けてしまったものもありますが、金継ぎなど修理に出して使っています。グラスは欠けたらそれで終わりですが、かつては日本の陶器は直して使うのが当たり前だったんです。新品に買い替えた方が、ずっと効率的かもしれません。しかし、壊れたものを修理して大切に使い続けるのは、日本の良いところです。酒碗で日本酒を提供することで、そうした文化をも伝えられると考えています。
ご家庭で日本酒を飲むなら、スタンダードなSHUWANが最適です。お酒の味や香りがストレートに拾え、ポテンシャルを100%楽しめます。ガラス製のワイングラスですと素っ気なく感じてしまいますが、陶器でできたSHUWANは素材感も日本酒に合っていますね。
酒碗は日本酒と日本料理の世界を大きく変える
酒碗は、日本酒の世界を大きく変える可能性を秘めていると思います。日本酒のつくり手の視点で考えると、間違いなく酒碗をひとつの軸にして味を設計していく酒蔵が出てくるでしょう。これから酒碗に合わせて、日本酒のつくり方が変わっていくのではないかと思います。酒碗には、それほどのポテンシャルがあるんです。
酒碗が架け橋となって酒蔵と料理屋の間の隔たりがなくなり、日本料理のおいしさを引き出すお酒がこれからもっと生まれると考えています。さらにお酒に合わせて、日本料理も変わります。こうしたつながりをつくるうえで、酒碗の普及は絶対に必要だと感じています。